2016年1月15日Linked Poem Circusで共通のタイトルを「種子」として、ひとりひとりが自由に書いた作品です。
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実になるまでは
あかせない
かとうゆか
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転がりおちた。
恐かった。
受け入れられた。
寒かった。
いつの間にか暗闇だった。
でもね、おいでおいでと囁かれ
すこし顔を出してみた。
陽が射して、風が吹いて、
夜は星が美しい。
雨も降るけど、なかなかいい。
いいよ、ここは、とてもよい。
恵矢
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蒔く人が陽を背に
ひとり
こちらを向く者がもうひとり。
今日、何度か彼等は擦れ違った
が自分の足跡など決して踏み直さず
役目を続けている。
畝には傾斜した影
そしてそこから揮発する
視線
は彼等の先達のものでもあるようだ。
satole
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乗りこなすことができるのです
書きこなすことさえできるのです
いっさい
手を使わないで
ジュテ
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一月の北半球に幾兆の種子眠り居て
人立ち騒ぐ
青条
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選ばれぬミックスナッツの夜
の皿
青条
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固い固い殻に身を潜め
深く深く土の中に眠っていたのです
凍った冬も日照りの夏も
息をすることすら出来ず眠っていたのです
そのようにしか生きる術を持たなかったのです
いくつの季節が過ぎたでしょう
ふと気付けばあなたの暖かい風の中
今、芽吹こうとしているのです
緩やかに密やかに
嫋やかにしなやかに
noriko
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草ぼうぼうの
荒れ果てた地平に
一つ花が咲いた
花はおそれていた
種の中にくるまれていた頃
外界へぽんと
出奔してゆくのを
澄んだ空気に絡む
あかるい芽を出すことを
種は土の重みに耐えかね
叫びをあげた
Pong!Pong!Pong!
赤いけしの花が
一つ開いて
よるの闇の狭間に
葉山美玖
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